小林英治建築研究所
建築家のエッセイ
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2004.10.8 (家づくりの会ホームページ掲示板に記述)
大学を出て2年程で勤めた事務所で、初めて住宅の担当者となりました。それは能役者の住まいで、その時の私は当時建築界で人気があった「アメリカ草の根主義」等と言ったものが好きで、どちらかと言うと伝統に対しては否定的な考えでした。読む本も当時流行っていた「メルロ・ポンティー」の構造主義あたりを一生懸命読んだりしていましたし、第一眼が日本へは向いていませんでした。それが「お能」なんて見たこともありませんし、見たくもありませんでしたが、所長さんが「能を知らなければ、能役者の家は設計できない」と言い、毎週土曜日になると渋谷の能楽堂へご一緒しました。初めて見た印象は、良く判らないままにも「自分に合っているな」と感じましたし、地謡と言う数人の男達の歌声がまるでクラシックを聞いているように酔いしれました。それからというものは、世阿弥や利休を読み漁り、お茶を習い陶磁器を見るために美術館やデパートの陶磁器売り場へと足繁く通うのが日課となりました。

能面にも多くの素晴らしい物が沢山ありますが、一般的には「小面」などが少女の愛らしさがあり人気があるようです。増女と言えば、怖い女が多いのですが、私はその一種の「節木増」と言う面に強く惹かれたものです。気品のある顔立ちの中にも、やさしさと幾多の苦渋に打ち勝ってきた強さを読み取って、正に惚れてしまいました。


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